「そこのあれ取って」が言えないオンラインのストレス

外出自粛の間,オンラインでコミュニケーションする機会が以前よりも増え,ビデオ通話が日常となりました. 私は,zoomやMicrosoft Teamsを使う会議が多いのですが,対面で複数の人とスライドなど決まった資料をシェアしながらのやりとりで,通信環境がある程度安定していれば,オンラインで普通の会議に必要なコミュニケーションはできることが,自粛期間中に体感できました.
しかし!2020年4月にオンラインの花見を福島県の郡山市でzoom開催することになり[1],日本で最古のソメイヨシノの木のある公園やその付近の散策を中継頂き,遠隔から参加させて頂いた時に,音声で色々とやってもらいたいことを中継している人に話しかけてくださいねと言われてはいたのですが,「あちらの方には何があるのか」,「そこの看板には何が書いてあるのか」「そちらから歩いてくる人がいるけれどその先には何があるのかしら」など,初めてみる公園の様子には気になるところがたくさんあり,質問もたくさんあったのですが,どれもこれもあちら,そこ,そちらといった指示語がないと説明にものすごく時間がかかりそうな質問で,知人でない中継して下さっている人に図々しく尋ねて時間を奪ってはという遠慮もあり,すっかり無言でテレビ中継のように散策を眺めるだけで終わってしまった経験から,普段あまり意識せずに使っていた指示語がオンラインで使えないことが,オンラインコミュニケーションの機会損失を招いていることに気づきました.
その体験を踏まえ,ビデオチャットツールで指示語が使えるようにできれば,遠隔でのフィールドワークや遠隔で作業をやってもらう時の指示などで役立つのではないかと思い,友人のエンジニアの赤塚さんと共に「ココソコ」というツールを作りました.これは,複数人で1人の人のカメラ画像を共有し,その画面内の任意の場所に誰でも指さしアイコンを表示することができるので,音声通話のなかでここ,そこなどの指示語を使いながらアイコンを表示することでオンラインで指示語を使ったコミュニケーションができるツールです.
指差しアイコン
研究では以前より遠隔作業支援等の研究が多く行われており,遠隔の場所を指し示すツールなども装備されてはいますが,多機能でツール導入までの環境設定が複雑な印象があります.ココソコは必要最低限な機能のみを実装し,特別なアプリケーションをインストールせずに実行できるブラウザーインタフェースにすることで,誰でもすぐに使えるようになっています.
動画は2020年5月に遠隔にいる友人と本郷付近を一緒に散策テストした様子です.画面上にお互い指さしをしながら指示語を使ってオンラインで会話しています.
やってみるとわかるのですが,指示語が使えるだけでオンラインで空間を共有しながらスムーズに会話ができてコミュニケーション負荷が全くかかりません.ココソコは,空間を介したコミュニケーションに特化したとても便利なツールであることを使うたびに確信しています.
[1] SASHIZUプレイベント
https://www.facebook.com/108149144189317/photos/a.108220590848839/108217777515787/